ELSI/RRIについて
ABOUT ELSI
ELSIは、科学技術の進歩に伴う倫理的、法的、社会的な問題を指し、それらが社会や法律、私たちの道徳に与える影響を考察する研究分野です。
ABOUT RRI
RRI(責任ある研究とイノベーション)とは、科学技術の革新が社会のニーズや価値観に合ったものになるように、研究の過程で包括性や持続可能性、倫理的責任を促進することを目指します。
身近なものから考える
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病院
将来的に、機能不全に陥った臓器を幹細胞から作られた臓器で置換するような再生医療が実現するかもしれません。一方、研究開発の段階では、研究参加者の保護や安全性・有効性の評価といった問題が生じます。また、未確立の治療に対処するような法規制の整備が求められます。さらに、将来的に医療として提供される場合には、そうした先端医療を受ける機会が平等に開かれることも重要です。
PPI(Patient and Public Involvement)は、科学・医学研究が患者や一般市民とともに、または患者・市民の手によって行われることを指します。患者・市民が研究の計画やデザインに参画し、成果の評価や活用方法の決定に関与することで、社会にとって有益な研究を実現します。患者や市民には、研究者と対等なパートナーとして役割を果たすことが期待されます。
自分の人生の最期をどのように迎えたいかについて、事前に医療従事者と繰り返し話し合って準備を進めることを「アドバンス・ケア・プランニング」と呼びます。医療が進歩しても、依然として有効な治療法がなく、痛みに苦しむ終末期の患者がいます。本人の意思を尊重した最期を実現するためには、日本で制度が未整備の尊厳死や安楽死について、是非を含めた議論が必要でしょう。
海
人工衛星との交信によって位置情報を把握するGPSや、人工衛星を介したインターネットアクセスなど、宇宙空間の利用が進んでいます。その一方で、老朽化した人工衛星や宇宙ゴミが衝突して破片が軌道上に拡散することで、将来的に宇宙への打ち上げが困難になる恐れもあります。宇宙空間で人類が利用できる範囲は限られており、安全で持続可能な宇宙利用に向けた規制が検討されています。
安定した電力供給やCO2排出削減の観点から原子力発電の利用が支持される一方で、その安全性や持続可能性は長年にわたり強く問われ続けています。原子力発電や原子炉の廃炉過程で発生する高レベル放射性廃棄物の安全な処分方法の確立は依然として課題であり、福島第一原子力発電所事故の発生から10年以上経過した現在も、周辺地域の復興や廃炉の方法に関する問題は未解決のままです。
気候変動とは、地球温暖化を含む気候状態や変動性の変化を指します。とりわけ地球温暖化の進行により、自然環境の急激な変化や災害の激甚化が発生し、人間社会や生態系に深刻な悪影響が及ぶことが懸念されています。気候変動の悪影響を抑制するための技術的解決策の探求に加えて、化石燃料依存からの脱却や、気候変動によるリスクとその抑制にかかる負担の分配などが議論されています。
道路
動植物のゲノム編集は、アレルゲンを含まない食品や特定の栄養素を強化した製品などの生産が期待される一方、安全性や環境への影響が懸念されています。また、編集によって動植物の自然な進化が損なわれる可能性や、消費者への適切な情報提供の重要性が指摘されています。将来的な食用に向けて、倫理的懸念を考慮しつつ、社会的に受容される食のデザインが求められています。
ドローンはかつてに比べて比較的容易に入手できるようになり、撮影、運搬、エンターテイメントなど、活用の場面も増えています。運動制御、飛行距離、情報通信といった性能が向上すれば、ドローン利用の可能性はさらに広がりますが、安全なドローン運行やプライバシー確保のような課題も生じます。身近な技術であるからこそ、ドローンのより良い使い方と規制を考える必要があります。
動植物の品種改良には長い歴史がありますが、これまで偶然の遺伝子変異や遺伝子組み換え技術が用いられてきました。しかし最近ではゲノム編集ツールの登場により、望ましい特性(例:気象条件に左右されず成長するという特徴)を持った植物を作ることが可能になりつつあります。他方で、こうして「改良」された動植物が環境や生態系に与える影響も、慎重に議論する必要があります。
自動運転車、電動キックボード、自動配送ロボットなどの新興モビリティ技術は、歩行者(特に高齢者や子ども)の安全確保、事故時の責任の所在、プライバシー侵害のリスク、法的枠組みの整備など、さまざまな倫理的・法的・社会的課題を提起します。また、これらの技術は歩道空間を圧迫し、衝突リスクの増加を招くため、社会的受容や公平なインフラ整備が求められています。
大学
デュアルユースは、科学技術が軍事利用と民生利用の両方に応用できる「軍民両用性」と、公共の利益に役立つ利用と悪用・誤用の両方に開かれているとする「善悪両義性」の二つの意味を持ちます。デュアルユース性のある科学技術の管理においては、学問の自由と安全保障の両立の難しさや、悪用・誤用の発生確率やその影響の大きさに関する評価の難しさが課題となっています。
脳オルガノイドは、幹細胞から作られる立体的な脳組織であり、脳の発達や疾患の研究に役立ちます。しかし、より複雑な脳組織が作られると意識や感覚を持つのではないか、またヒト由来の組織を動物に移植すると動物の知能が高まるのではないか、などの懸念が指摘されます。脳オルガノイド研究は多様な分野に応用されるため、各分野における問題を考慮しながら進めることが重要です。
研究不正とは、捏造・改竄・盗用に代表される、研究活動において行われる不適切な行為を指します。これは単に学術的な問題であるだけでなく、誤った成果に基づいて開発された製品は社会全体に悪影響を及ぼします。研究者個人の規範・倫理、組織として適切な研究環境、そして社会から信頼される研究活動といった多様な側面から、研究不正の問題が世界的に検討されています。
家
街中の監視カメラに加え、電子メール、SNSの投稿、電子マネーでの決済、スマートフォンの位置情報など、私達の日常生活のほとんどが情報として記録されています。これらの情報は、企業や国家が主に管理しますが、何らかの理由で漏洩したり、企業や国家による監視や検閲ができる状況を作ったりします。便利さと監視の境界をどのように設定すべきか、広く議論する必要があります。
人工知能はコンピュータや電化製品など身近なデバイスに実装されています。特に、対話型人工知能は近年目覚ましい発展を遂げており、教育・研究・仕事上の業務・創造的活動など、さまざまな場面で人の活動を支援しています。しかし、個人のデータや習慣が思わぬ形で蓄積・解析されてしまうことなど、人工知能の利用が人間社会に与える潜在的な負の影響についても考慮する必要があります。
インターネット利用人口の増加により、莫大な量のデータ(ビッグデータ)がリアルタイムで生み出さています。ビッグデータは統計的に解析され、ビジネスでも研究でも様々な用途で活用されています。他方で、生成AIの利用をめぐる議論のように、ビッグデータを構成する一つ一つのデータには著作物や個人情報が含まれるため、著作権やプライバシーに配慮した適切な利活用が求められます。
ゲノム編集を施した食品は、食品業界の参入が進んでおり、近い将来、食卓に並ぶかもしれません。しかし、安全性や長期的な健康への影響に関する懸念があり、十分な検証が求められます。また、消費者に対する適切な情報提供や表示の義務化が重要です。さらに、環境への影響や、自然な進化が損なわれる可能性も議論されており、倫理的配慮を伴った開発と適切な規制が必要です。